2010年9月1日水曜日

西表島 イタジキ川遡行10 遭難騒ぎ


2010年9月6日
西表島 イタジキ川遡行10 遭難騒ぎ


9/6石垣島 ペンションやいま日和
西表島を離れて3日目、私たちは石垣島でバカンスを楽しんでいた。といっても、たいしてやることがあるわけでなく、ほとんど宿でぶらぶらしていただけなんだけど。加藤は蝶を求めて朝早くから出かけていた。佐藤は朝っぱらからビールを飲んでいる。私は宿に置いてあったゴルゴ13を読みふけっていた。
私の携帯電話に知らない番号の電話が入る。
「西表島白浜駐在所の××だが、加藤さんとは一緒かね?(←けっこう強い口調)」
「はい、一緒にいますよ。(といっても、加藤はチョウチョを探しにいってるけど)」
「何っ?ていうことは加藤さんは無事だということか!?こっちは彼が遭難したと思って捜索隊も出てるし、向こうの親御さんは遭難したと大騒ぎになってるぞ!(怒)」
「はぁ?どういうことですか!?」


落ち着いて話を聞くと、西表島の白浜駐在所にゴルジュで流した加藤の財布が届けられたそうだ。財布から加藤の名前がわかり、提出されていた登山計画書と照会して我々が遭難してしまったと勘違いしてしまったようだ。
なんとも申し訳ない話である。大変な心配と迷惑をかけてしまった・・・んっ?待てよ。おかしいぞ?下山報告はきちんとしたはずだけどなぁ・・・

普段の山行では絶対にしない警察への下山報告を今回に限ってはしておいた。なぜならそれには理由があったからだ。我々が下山したユチン川河口付近は近くにバス停がなかった。ドシャブリの中、上原方面へ一時間近くも歩いたが我慢も限界にきてタクシーを呼ぶことにした。しかしタクシーの電話番号がわからない。そうだ!警察に下山報告をするついでに番号を教えてもらおう!!我ながらナイスアイデア。アダンの木陰で雨をしのぎながら登山計画書を提出した上原駐在所に電話をかける。
私:「登山計画書を提出していた飯田山岳会のものですが、下山の報告です」
駐:「え?さっき電話かけてきた大学生?」
私:「いいえ、違います。飯田山岳会です!」
駐:「さっきかけてきた大学生のワンゲル・・・」
×3
電話が遠いのか、私の前にかけてきた大学生のことが気になるのか何度も同じやりとりを繰り返した。いいかげん頭にきて切ってやろうかと思ったが、タクシーの電話番号を教えてもらいたかったので我慢した。
私:「大変申し訳ないですが、タクシーの電話番号を教えてもらえればありがたいのですが・・・」
駐:「今、どこにいるの?上原からだと〇〇レンタカーていうタクシー会社があるから電話して」
(いや、だから教えてくれって言ってんだろ!!)
私:「今、非常に雨が激しく降っていまして(←情で訴える作戦)、できれば番号を教えていただければ大変ありがたいのですが・・・」
駐:「いやぁ、104で聞いてくんない?〇〇レンタカーっていうから」
ムッキー!!本当に頭にきた!!ドシャブリの中、こっちは必死こいて電話しているのに、なんちゅうポリ公じゃ!!いや失礼。警察署は電話案内ではありません。私が悪いのです。


とまぁ、こんなやりとりをしたので上原駐在所の人間も覚えているはずだ。しかし電話をかけてきた白浜駐在所の駐在員は、“おたくらのせいで捜索隊まで出して大騒ぎになってんだ!どうしてくれる!!”みたいな雰囲気だ(実際にはこんなこと言ってませんよ)。 それにしても捜索隊まで出したとなってはオオゴトである。私もいちおう大人の対応をする。「それは大変なご心配とご迷惑をおかけして非常に申し訳ございません。」と謝っとく。そして「登山届を提出した上原駐在所には下山報告をしていたんですけど、そういう話は聞いてませんでしょうか?」と続けた。
駐:「えっ、あれ?そうなの?」
私:「ええ。しつこくタクシーの電話番号を聞いたので覚えていると思いますけど」 
駐:「あぁ~、そうだったか。いやぁてっきり遭難したと思って、捜索隊も出るところだったよ・・・」
かなりトーンダウン。しかも捜索隊は出てないし。しかしこちらが財布を落として迷惑をかけたことには違いない。

その後、駐在所のほうへ加藤から直接電話をかけさせることを約束し電話を切る。さすがに加藤の親には心配をかけて申し訳ないと思い電話をかけた。電話にでた加藤の母親は、駐在所のほうから無事を知らされたすぐ後だったので、かなり安心した様子だった。それでも涙声だったのでそうとう心配したに違いない。こちらも恐縮して大変申し訳なく思う。
母:「それで息子は今どこにいるのでしょうか?」
私:「チョ、チョウチョを探しに出かけてまして・・・」
母:「え?・・・」
この騒ぎの中、いったい何をやっているんだこのバカ息子は。

そもそもなぜこんな大騒ぎになってしまったのか後で状況を整理した。
まず地元ガイドがツアーで訪れたマヤグスクの滝で、財布やヘッドランプなどを散乱した状態で発見する→“こりゃ!この上流で遭難した人がいるぞ!!”ということで白浜駐在所に届ける→白浜駐在所は西表島の各駐在所に登山計画書を照会する→加藤のパーティーを確認する→こいつら増水しているこの時期にとんでもないところに入ってるぞ→遭難?→計画書から加藤に電話をかける→でない(でるわけない。携帯電話も一緒に流してんだから)→やっぱり遭難か?→計画書から加藤の緊急連絡先(親)に電話をかける→下山の連絡なし→遭難決定→捜索隊集合

そしてさらに計画書に記載されている他のメンバーにも電話をかける→佐藤にかける→酔っぱらって電話にでない→佐藤の親にかける→留守ででない→私の妻にかける→仕事中ででれない→私に電話をかける→私→生きてる!


下山報告を受けた上原駐在所が、きちんと処理をしていればこんなことにはならなかったというのもあるが、白浜駐在所の対応にも問題あるような気がする。
私の提出した登山計画書には、現地連絡先(私の携帯)や留守本部(飯田山岳会会員の携帯)の番号を緊急時の連絡先としてわかるように表示している。常識的に考えてそこに連絡をとってから遭難の初動を判断すべきではないだろうか。親なんかに電話しても、下山報告どころか山に行っていることすら知らなかったという話にしかならないだろう。捜索隊はどれだけの規模で集められたか知らないが、全くもって迷惑な話であったにちがいない。
でも、そもそも加藤がゴルジュでザックの中身をまき散らかさなけらばこんな騒ぎにならなかったのも事実なので、これは同じパーティーのリーダーとして大いに反省している。しかも本来ならば加藤本人が西表島まで出向いて拾得物の確認と受け取りをしなければならないところだが、彼は蝶を追っかけまわしていて連絡がつかず、おまけに翌日の飛行機で帰らなくてはならないことを白浜駐在所に説明すると、駐在員さんがその日の船便で拾得物を石垣島の八重山警察署へ送る手配をしてくれた。白浜駐在所様、本当に感謝感謝感謝です!いろいろ書いたけどごめんさい。

その後はのんびりとビーチで過ごす予定だったが、加藤の父親、駐在所、八重山警察署、宿泊していたペンションなどからこのことで何度も電話があり、全くバカンスどころではなかった。
そのかわり加藤には、その夜しっかりとご馳走になった。1杯9000円もするヤシガニを食えるなんて、一生の思い出になりました。本当においしかったです。加藤先生、ありがとうございます。 


どうでもいいけど、加藤が八重山警察署で拾得物の確認をしたとき、パンティーストッキング(ヒル用)が出てきて婦警さんに白い目で見られたことが今回の旅のオチです。

おわり

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