2010年9月1日水曜日

西表島 イタジキ川遡行1 出発



2010年9月1日
西表島 イタジキ川遡行1 出発
メンバー:塩月、佐藤、加藤 

松本を朝6時に出て、羽田へ向かう。
出発前に佐藤のアパートで、装備の確認をした。前日に沖縄地方を台風が直撃したので、沢は非常に面白い(?)ことになっていることが予想された。ハーケンなどの登攀装備を念のため増やすことにする。
高速道路に入る前にマックスバリュー(スーパー)へ寄って、佐藤、加藤はパンティーストッキングを購入した。ヒル対策にはパンストがいいということだが、私は遠慮した。佐藤はLLサイズのパンストを探していたが、結局無くてLサイズ3枚セットを購入。早朝、オッサンが婦人下着売り場をうろつく姿は異様だ。

羽田には10時ごろ到着。パーキングに車を預け、空港に向かう。昼飯を食べてから飛行機の搭乗手続きをする。
大きな汚いザックを持っていると、たいてい荷物検査は厳しい。毎回のようにMSRドラゴンフライのガソリンボンベ(もちろんカラ)は厳しいチェックを受ける。その他にも怪しいものがないかザックの中をひっくり返して検査を受けるの普通だ。しかしなぜだか今回は違った。ほとんどノーチェック。X線の中を通すだけ。しかも重量は余裕で20Kgオーバーなのだが、測りに乗せると19Kgジャスト!佐藤と加藤の荷物も19kgだったので、どうやらANAの重量計は19kg以上を表示しないようだ。これから航空機はずっとANAを利用しようと思った。
何のストレスもなく13:15分発沖縄行の航空機に乗れた。加藤はなぜか機内持ち込みで、トイレットペーパー丸々1個だけ持って入る。理解不能。

沖縄空港で石垣島行きの航空機に乗り換える。前日の台風の影響なのか、出発が1時間以上遅れた。石垣島には18:30過ぎに到着する。南の島なのに、東京よりもはるかに涼しく感じた。実際、気温は東京より低いのかもしれない。
西表島には石垣島からフェリーで向かわなくてはならないが、最終便が出てしまっているのでこの日は石垣島のホテルに宿泊する。初日から西表島に入ることができれば日程的に楽になるが、早発の航空機のチケットが手に入らなかったのでしかたない。しかし西表島ではスーパーなどがほとんどないので、食料などの買い出しが楽にできる石垣島にステイするのは正解のような気がした。

ホテルに向かうタクシーで、途中、ガソリンスタンドに寄ってもらいドラゴンフライの燃料(ガソリン)を購入する。航空機では普段、山で使用するガスカートリッジを運搬できない。そのため現地調達できるガソリンを燃料にできるドラゴンフライを用意した。しかし今更だけど、石垣島であればEPIなどのガスカートリッジは手に入ったのではないかと思うがどうだろうか?

ホテルにチェックインした後、市内へ買い出しにでかけた。スパムやゴーヤ、ソーキそばなど島らしいものも購入する。朝食用の即席ラーメンに“うまかっちゃん”を買った。佐藤と加藤は知らないラーメンを嫌がったが、九州(大分)産まれの私にとっては、これこそがラーメン。
ホテルに戻りパッキングをする。佐藤と加藤はストッキングの試し着をした。佐藤の体はLLサイズだが、ストッキングはLサイズだったため装着した瞬間に電線が走る。ヒル対策の意味が全く無い。私はタイツをファイントラックのフラッドラッシュタイツとスキンメッシュタイツを2重に履いてヒル対策とした。これでヒルが侵入して刺されたことはないので、西表島でもきっと有効だろう。
ちなみに今回は、ビバークするのにARAIテントのカヤライズを佐藤に用意してもらった。普通の沢だとタープだけでいいのだが、虫の襲撃を恐れてテントを用意することにした。ただカヤライズだけだと防水性がないのでタープとフライシートも用意する。暑いのでシュラフは持たない。シュラフカバーだけにした。

そんなわけで準備万端!いよいよ西表島へ突撃する。


つづく

山と釣り、ときどき映像制作

西表島 イタジキ川遡行2 縦断道からマヤグスクの滝へ


20010年9月2日 
西表島 イタジキ川遡行2 縦断道からマヤグスクの滝へ

メンバー:塩月、佐藤、加藤 

朝6時起床。石垣島では雨がけっこう降っていた。
朝7:30、離島ターミナルのコインロッカーに余分な荷物をデポして西表島行きのフェリーに乗る。本当は6:40発の船に乗る予定だったが、私の勘違いで1本遅れた便になってしまった。というのも、離島ターミナルでは二つの船会社が営業をしていて、それぞれの会社によって運行時間、船乗り場が異なる。行き先が同じなのに、窓口が違うので非常に混乱しやすい。今回も違う船会社の乗り場でチケットを渡したときに間違いを指摘され、そのときは既に予定の船は出航した後というなんともお粗末な結果になってしまった。西表島行きのフェリーは“競艇でもしているのか!?”と思うほどのスピードで進む。西表島の上原港には40分ほどで到着。

上原港から浦内川の遊覧船乗り場までは無料の送迎バスが出ている。バスに乗り、島の風景を眺めていると“また再び西表島にやってきたぞ!”という実感がわいてくる。乗船場に到着するころには天気も回復。チケットを買って入山届けを提出する。西表島を縦断する場合には駐在所、営林署に入山届けを出すことが義務付けられている。本当は直接、駐在所に提出したいところだが、乗船場でも受け付けてくれるということなので、ここに提出することにした。念のため、切手を張った上原駐在所の宛先を書いた郵便封筒に入れて提出する。

乗船場で縦断道の情報収集をする。前日に某大学のワンゲル部員がイタジキ川を渡渉できなくて戻ってきたという話を聞く。やはり台風の影響で増水しているようだ。
マングローブの生い茂る浦内川を船で遡上する。船に乗っているのは私たちのほかに年配の夫婦とトレッキングツアーらしき3人組だけだ。出発してすぐに年配の夫婦が“船に酔ったから戻してくれ”と言い出す。“今乗ったばっかりで酔うヒマなんてなかっただろ!!”と突っ込みたくなるほどの距離しか進んでないのに船着場に戻ることになった。なんだか雲行きが怪しい。そして再び船が走り出すころには本当に雲行きが怪しくなって大粒の雨が落ちてきた。最悪な気分になる。

幸いにも軍艦岩に到着するころには雨も上がり晴れ間も出てきた。船を下りるとき船頭さんに“縦断できなくて戻ってくる場合は4時までに帰ってきてくださいよ”と言われる。縦断ではないのだが、どちらにせよこの日戻って船に乗る予定はないので、そのことを説明する。船頭さんの雰囲気から、イタジキ川は渡渉が困難なほど増水していることが予想された。
軍艦岩から少し離れたベンチが設置してあるところでヒルノックを体中に吹きかけた。よく整備された道がマリュドゥの滝、カンピレーの滝まで続く。途中、某体育大学の学生の集団が前を歩くがペースが遅いので道を譲ってもらい先を急ぐ。あたり前だが体育系の若者が多く、挨拶もしっかりしていて気持ちがいい。30分ほどでマリュドゥの滝の展望台に到着する。ここにも大勢の体育大学の学生がいた。総勢50人以上の集団であろうか?地元のガイドと思われる人がこの集団についていた。マヤグスクの滝を越えてイタジキ川を遡行することを話すと猛烈に反対された。入り口のゴルジュは岩が脆く、落石も多い、あんなところを行くのは正気の沙汰ではない・・・みたいなことを言われる。何よりも増水していて無理だというふうなことも。無理かもしれないが今年はヤルつもりで来たので、申し訳ないけど適当に聞き流した
マリュドゥの滝を過ぎるとすぐにカンピレーの滝が現れる。日本離れしたスケールの大きい風景に感動する。でも、カンピレーの滝は“滝”というより“激流”といった感じのところだ。
カンピレーの滝を過ぎると縦断道に入る。道はとたんに悪くなり、歩きにくくなる。けっこうぬかるんでいるのでスニーカーだと大変だ。我々は渓流シューズを履いたままなので、ドロドロであっても気にはならないがフェルトのソールは滑りやすくて苦労する。それにしても暑い。汗が止まらない。佐藤は“山でこんなに暑いのは初めてだ!”と不快感を口にする。それにしてもセミの鳴き声がうるさい。しかも本州で聞くようなセミの鳴き声ではなく、'''壊れた電子機器が爆発寸前に出す不規則で不快な擬音'''のような感じの鳴き声である。加藤はこの音が“シコリテー”にしか聞こえないとワケのわからないこと言い出すし、不快指数は最高潮に達した。私は少し脱水症状になり、激しい頭痛がするようになる。頭痛薬を飲み、多めに水分を補給した。
 第二小屋跡を過ぎて小さな沢を渡渉した。しばらく歩くとようやくイタジキ川出合に到着する。イタジキ川へは浦内川から水の流れの中を入っていった。足をとられそうな水流だが遡行するには問題ない。佐藤に“水の量はどうか?”と聞かれたので、“激多い!”と応える。実際、去年ゴルジュを敗退したときと変わらない水量に感じた。
イタジキ川を遡行してマヤグスクの滝を目指す。左岸側に明瞭な踏み後があるが、沢登りにきたので水流の中を行く。川幅いっぱいにナメが広がり、その向こうには大きな釜を持つ小滝が見える。この景色を見るだけでもここに来る価値はありそうだ。
やがて大きな水の音が聞こえてくると、目の前に半円形の巨大な白い流れが現れる。マヤグスクの滝に到着した。一年半ぶりにまたここにやってきた。熱いものが込み上げてくる。滝は階段状になっていて、右のほうから簡単に登ることができる。
マヤグスクの滝の上は扇形のステージになっている。そのステージの奥には高さ20m以上の絶壁に囲まれたゴルジュが口を開け、ゴウゴウと音をたてながら大量の水を吐き出している。まるで黒部ダムの放水のようだ。水の勢いが強すぎて、ステージを横切り右岸側へ行くことができない。足をとられれば、そのままステージが発射台になりマヤグスクの滝を飛び出していきそうだ。

あまりに異様な風景に加藤はビビッて言葉を失う。逆に佐藤は“これはすごいゴルジュだ!おもしれー!!”と興奮した。どうなる俺たち?


つづく


山と釣り、ときどき映像制作

西表島 イタジキ川遡行3  ビバーク



20010年9月2日 
西表島 イタジキ川遡行3  ビバーク
メンバー:塩月、佐藤、加藤 

マヤグスクの滝の上で、ゴルジュの中を覗き込む。佐藤“見える感じだと、二番目の滝の左から登れそうですね”と、ゴルジュ攻略のイメージができた様子。時刻は午後2時ごろ。まだ行動する時間はある。そのまま突入するかと思いきや佐藤から意外な言葉が・・・“今日はこれでビバークしましょう”
彼の考えでは”一晩まてば絶対に水は少なくなる!”ということだ。これだけスラブの岩が続く沢は、水を溜めずにすぐに流れてしまい水の引きも早いという予測を立てた。いずれにせよ尋常じゃないゴルジュなので、一日待って朝一番に突入したほうが時間的にも体力的にも余裕がある。ここは慎重に行動することにした。ただし夜、雨が降らないという保障はないが。

佐藤は“テント設営してますわ!”と言って、先に行ってしまった。加藤を見ると明らかに動揺しているのがわかる。無理もない。私も去年このゴルジュをはじめて見たときは、正直ビビッタ。しかしそのための準備を1年間してきたつもりなので、今は恐怖心よりもここに戻ってきたという喜びのほうが強い。加藤に“安全第一でやるから絶対に大丈夫だ”と声をかけるも。“はあぁ~・・・”と頼りない返事が返ってくる。加藤は大学時代は山岳部だったし、フリー(クライミング)もそうとうやっていたと聞いている。このゴルジュを突破できる実力は間違いなくあるだろう。あとは気持ちだけだ。一晩ゆっくり寝れば気持ちも落ち着くだろう。どうでもいいけどテント設営すると言って佐藤は先に行ってしまったが、テント一式を担いでいるのはオレなんだけど。

イタジキ川の下流に、河原が広くなった絶好のテン場を見つけた。
佐藤はそこで“大ウナギを釣る!”と言って、鶏肉をエサに使った仕掛けをしこんでいた。川の中を見るとテナガエビがウヨウヨいる。夕食の足しにこいつらを捕獲することにした。テナガエビは加藤が持ってきた蝶を採取するための網を使って捕獲した。加藤は大学院までいって蝶の研究をするほど蝶が好きで、卒業した今も“アマチュア蝶研究家”として活動している。今回の西表島も、珍しい蝶を観察できると聞いて参加したようなものだ。しかし実際は蝶をほとんど見かけることもなく、テナガエビばかりを採取することになった。蝶を採取するための網をテナガエビを捕るために使うのを最初は嫌がっていたが、山岳部の先輩だった佐藤には逆らえずテナガエビ専用の網となってしまった。 
大ウナギは釣れなかったが、テナガエビは大漁だった。テナガエビは日が暮れるとよく獲れた。暗くなると目があまり見えなくなるのか昼間のような機敏さがない。大きいエビは塩焼きにして、小さいエビは味噌汁に入れて食べた。どちらも激烈に美味かったが、小さいエビのほうが甘みが強くておいしく感じた。
去年はキャンプをしていてヒルやダニの襲来に悩まされたが、今回はほとんどヒルを見かけなかった。パンツ一枚でいた佐藤がヒル1匹にやられたぐらいだ。これも猛暑の影響なのか?
テントはカヤライズを用意して正解だった。とても暑くてシュラフカバーだけで十分だった。シュラフも軽量化のため持ってこなくてよかった。
ラジオで天気予報を聞いた。翌日は晴れ間が続くようだ。よかった。ただ台風9号が近づいてるらしい。空には満天の星空が広がる。山(山岳)で見るよりよく見える。離島は周りが海で、街明かりが無いからだろう。天の川の流れがこれほどはっきり見えたのは初めてだ。翌日のゴルジュ突破もうまくいきそうな気がした。


つづく


山と釣り、ときどき映像制作