2010年9月1日水曜日

西表島 イタジキ川遡行8 ビバーク2日目



2010年9月3日
西表島 イタジキ川遡行 ビバーク2日目
メンバー:塩月、佐藤、加藤 

幻の湖のすぐ上流に絶好のテン場を見つけた。林の中なので薪もすぐ集めることができた。佐藤は幻の湖を見下ろせる岩の上にテントを張りたがったが、酔っ払って落ちたらシャレにならないので却下した。
夕方6時くらいに到着したがまだ明るい。西表島は長野に比べて、ずいぶんと日没の時間が遅い。あたり前だけど。長野では9月に入ると午後6時ごろが日没だ。ここでは7時半ごろまで明かりは必要なかった。
ビショビショに濡れた装備を干して焚火にあたる。さすがにこの日は疲れた。ゴルジュ突破に半日もかかったのがきいた。佐藤は泳ぎすぎて疲れたと言っている。そして加藤は財布を流してしまったと落ち込んでいた。

加藤はゴルジュで貴重品を含む装備をいくつか流してしまった。ザックをロープで引っ張ったとき、上蓋の中に入れてあったものが全部出てしまったということだ。ゴルジュに入る前に上蓋のチャックを閉め忘れたか、チャックが少し開いていて激流で全開になってしまったのか・・・原因はわからないが気の毒な話だ。しかしその話を聞いたとき“そういえば・・・”という感じで思い出したことがあった。

ゴルジュの中で、岩に引っかかって動かなくなった加藤のザックを思いっきり引っ張っていたときのことだ。激流の中を白いタオルのようなものがユラユラと漂っている。“あれは何?大ウナギ?白いけど・・・”。極度に緊張した状況の中だったので幻覚を見ているのかと思ったが、あれは加藤のザックからバラまかれたトイレットペーパーに間違いなかった。航空機の機内持ち込みで、わざわざ大事に持っていたあのトイレットペーパー丸々一個をまさかこんな形で失ってしまうとは・・・まぁ、どうでもいいけど。その話を聞いた佐藤は“おめぇ、ゴルジュで白線流してどうすんだ!?”と大笑いしていた。加藤はますますショボクレタ。ちなみにこのとき失った加藤の装備は、財布、携帯電話、ヘッドランプ、地図、トイレットペーパー、ライターなどなど。加藤には申し訳ないが、共同装備として失って困るものは無かったので正直ホッとした。しかしこのときは笑い話ですんだ白線流しも後でとんでもない騒ぎを起こすことになる。

夕食の準備を佐藤と加藤がしてくれた。申し訳ないが、焚火にあたっているうちに私は寝てしまった。夕食ができたら佐藤が起こしてくれたので、ありがたくカレーライスと沖縄そばをいただく。そしてすぐに寝てしまった。私は完全にグロッキー。気がつけば全員テントの中で寝ていた。

夜10時ころ、急に目が覚めた。おなか一杯になって一眠りしたら元気になったようだ。佐藤もなぜか目を覚ました。夜のジャングルは、いろんな鳴き声が聞こえた。佐藤がテントの外を見て“何か光ってる”とつぶやく。よく見ると地面がもやっと薄く光っている。昨年の3月に西表島に来たときはヤエヤマボタルが乱舞して光っていたが、それとは違う光だ。佐藤が手を伸ばして、光るものつまんでテントに入れた。それはただの落ち葉だった。よくわからないが落ち葉についたカビか微生物が発光しているようだ。なんとも不思議な現象だ。

元気になった佐藤が“大ウナギを釣りに行くぞ!”と言って加藤をたたき起こす。加藤は“え、えぇぇ・・・できれば寝たいですけど・・・”とぶつぶつ言っていたが、先輩のいうことには“イエス”“はい”のどちらかしかないので持参したテナガエビ専用網を用意して、しぶしぶテントから出て行った。結局、一時間ほどがんばったが、翌朝の味噌汁に入れる小さなテナガエビしか捕れなかった。 

夜中、首筋あたりの異常なかゆみで目が覚めた。佐藤が“カイィ~カイィ~”とのたうちまわっている。パンツ一枚で寝ていた佐藤は、全身を何かに刺されていた。私もシュラフカバーから出ている首から顔にかけて何かに何箇所も刺されている。明かりをつけても、それが何かなのかわからない。天井をよくみると、細かい粉みたいなものが舞っている。本当に小さくて、テントのホコリだと思っていたら、それは虫だった。見たこともないような細かいブヨが大量にベンチレーターの隙間から入ってきて、我々を襲っていたのだ。“ギョェ~なんじゃこりゃぁー!?”。急いで蚊取り線香を外に置いてあるザックに取りに行く。テントの外へ出たとたん、ブヨの大群に襲われる。命からがら蚊取り線香をテントに持ち込み点火した。効くかわからないがヒルノックも散布する。蚊取り線香とヒルノックの匂いでテントの中はものすごいことになるが、ブヨの襲撃はおさまった。こんな恐ろしいブヨは初めてだ。佐藤の体を見るとひどいことになっていた。私もテントから少し出ただけで、ずいぶんとやられた。シュラフカバーに包まって寝ていた加藤は、この騒ぎに全く目を覚まさなかった。
かゆみも落ち着いてきたころ、ようやく静かな眠りにつくことができた。 



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